【読んだ本メモ】梅田卓夫・清水良典・服部左右一・松川由博(編)『高校生のための批評入門』(ちくま学芸文庫)

批評ってなんだろうか?ってことに対して、人の心の働きが文章となったものだと広く捉えてさまざまな文章を収録していて、それぞれの文章について考えながら読めるようになっている。

文章の書き方テクニック的な解説の本ではない。

ひとつあたり平均5ページほどの短い文章が抄録されていて、どれもタイトル通り高校生が読んで考えることができるものばかりではあるのだけど、大人が読んでも深く味わえる。

文学者だけでなくて科学や哲学、芸術家、いろんな分野の人の文章が出てくるので、自分の興味のある人の文章に触れる以外に、思いもよらない文章を読む良い機会にもなると思う。

チャップリンの映画での演説や、カフカの「掟の門」、手塚治虫の対談なんかもあった。

ひとつの文章につきひとつずつ、その文章について「これはどういうことだろうか」「これについて身近な例を考えてみよう」みたいな小さな課題のようなものを与えられるので、読みながら考えてみると面白い。

学生時代の国語の授業を思い出すような。

あのころは自ら考えるとかいろいろ読んでみようとか思うことはなかったな。

巻末にそれら課題について編者によるひとつの解答例のような文章が掲載されていて、それも凝っていてボリュームたくさん、読み応えがあって良い。

生命とは、生と死とは、他者とは、そんな大きな話だけでなくてもいいのだけど、自分の考えと他人の考えにどんな差があるのかを一歩引いたところから考えてみるのは大切だと思うんだよね。

地獄のツイッター世界で顕著な、自分が主張したいだけ声高に叫んで他人を受け容れない人や、脊髄反射的に一面的なリプライを送っちゃうような人を見ていると、この本で提示されている批評のあり方を忘れてはいけないなぁと思う。

いや、偉そうなこと言ってできてないことも多いんだけど。

ゆめゆめ心がけねばなりません。

僕が子供のころは「日本人は自分の意見を言わないのがアカンのや」と教師や大人たちに言われてきましたが、現在の地獄インターネット世界は言いたいこと言いたい放題になっちまって、若人はもちろん、僕が子供の頃に偉そうなことを言っていた大人たちにもゴミみたいなことしか言ってないやつもたくさんいる。

まともに批評する精神、批評を受け入れる精神もあわせもたないとダメだと感じている。

そういう心がけを育むのにちょうどいい一冊だと思います。