患者にビールを飲ませた不良ナース忘れられない患者さん

私がまだまだ若い時のお話です。

患者さんは、Tさん、50代女性。

頚椎、脊椎の病気で手術を受けました。手術後、Tさんの下半身は完全麻痺になりました。

元明るく活発で社交的だったそうです。

ご主人とも仲良く、よく旅行にも行かれていたそうです。

Tさんは、絶望的になりながらも、わずかな希望を持ち、整形外科から脳外科、つまり私が働いていた病棟に移動してきました。

当時、脳外科で頚椎、脊椎に関して腕のいいと評判の医師がいたからです。

脳外科で手術を受けましたが、結果は変わらずでした。胸部に進んでいく麻痺を食い止めるのが精一杯でした。

Tさんは私達ナースに心を閉ざしていました。

話をする時も目を合わせません。

どんな言葉をかけていいのかもわからずただただ辛いだろうな、と思うことしかできませんでした。

Tさんは重度のうつ状態になってしまいました。

ベッドの上でのみの生活、横を向くにも自分ではできなくなり、排泄も垂れ流しです。

Tさんの生活は一変してしまったのです。

少しずつ少しずつ心を開いてくれるまでには23月という月日がかかりました。

毎日可能な限り担架入浴をし、麻痺した足を大切にマッサージしました。ペディキュアもつけてあげたりして

そして私が言う冗談にも少しずつ笑ってくれるようになりました。

Tさんは毎日どっさり睡眠薬を飲んでも眠れないと言います。寝た気がしない、と。

医師の処方により、ワインが微量に入った薬を飲むようになりました。

こんなのお酒じゃない

と、飲まなくなりました。そして、

ビールが飲みたい

といつも話していました。

Tさんは毎日家ではビールを飲んでいたそうです。

私は真剣に考えました

Tさんは、確か内臓疾患は一つもない

食事制限もなく持ち込み食可能

もうすぐ正月。同室者は全て退院してしまう!

そうだ正月がチャンス

私は年末の大晦日、深夜勤でした。

Tさんはいつも眠れなく、0時過ぎまで起きていることを知っていました。

なんとかTさんにビールを飲ませてあげたい

その一心で深夜勤に望みました。

コソコソビールを持ち、何重にも袋に包み、先輩看護師に見つからないよう冷蔵庫に冷やしておきました。

そして0時前に仲間のナースと

じゃじゃじゃじゃーんと

Tさんの部屋に

カウントダウン一緒にお祝いしよーって、ビールを差し出すと、

嬉しい!嬉しい!

と泣き出してしまいました。

酒が!でなく、私達の気持ちが嬉しかったと後で聞きました

飲む直前まで、私達に迷惑がかからないかと心配してました。

大丈夫!ハッピーニュイヤー

と、缶ビールを3人で乾杯

おいしい!おいしい!とごくごく飲んでくれました。私達は、一応飲むふり一応勤務中

その夜はじめて?というくらいTさんはイビキをかいて寝ていました。

翌朝、入院してからこんなに眠れた日はなかったわ。ありがとう

と何度も。

もしよければ、先生の許可をもらい、同室者がいない夜はいつでもビールを飲めるようにお願いしてみようか?と提案すると、

もう十分ほんとにおいしかったー。早く家に帰ってビールを飲むという目標ができたわ

と。

その日をきっかけに、Tさんは別人のように明るくなりました。リハビリもかんばりました。

自己導尿もがんばり、手技を確立しました。

なんで急にTさん、あんなに明るく前向きになったの?と他のナース達は不思議そうに話していました。私は知らんぷり

そして、無事に退院し、自宅でご家族が介護することになりました。

最後まであの日の夜のことは私達だけの内緒の夜です。退院の日はTさん私と抱き合い、大号泣でした

こんなあら療法考え、実行してしまった私は若かったのですね。今では立場を考えとてもできません

ただ、ただ純粋に患者さんのことだけを考えていたあの時にもう一度もどってみたいな

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